中学生の伏線回収した日 2025.7.21

今日は中高の後輩である北川靖明くんの「生誕50周年リサイタル」に行ってきました。この企画については2年ほど前から聞いていたので、満を持してこの日を迎えることとなりました。
中学生の伏線回収した日 2025.7.21_b0002156_15181965.jpg

しかし僕にとっては、40年の歳月を経て、ある意味、伏線を回収するコンサートになったと言っても過言ではない。また思い出話をします。

中3の1学期、勉強シコって成績を上げて2学期から上のクラスに上がった話は最近しました。その直前の夏休み、あるカセットを聴いた。それがカール・ライスター&ベルリン・フィル・ゾリステンによる「モーツァルト/クラリネット五重奏曲」であった。はっきり、その曲との出会いで、その後の運命は大きく変わった。

もし出会ってなかったら、高校で吹奏楽部に入っていたかわからない。その冬にアンサンブルコンテストに出場したいと思っていたかもわからない。

1年後の高校1年の夏、吹奏楽コンクールの地区予選を突破し、合宿が8月半ばまで延びた。しかし帰省こそできなかったものの、旧・金剛寮という昔の寮に移動し、雑魚寝で昼は練習、夜はいろんなOBも来て酒盛りのような緩い時代だったわけで、楽しい合宿だった。

そこで当時は珍しかったCDラジカセを家から持ってきて(普段の寮では禁止されていた)、何枚かのCDも持参。覚えてる範囲で言うと、モーツァルトのクラリネット五重奏曲・協奏曲はもちろん、グラン・パルティータ、レクイエム、歌曲集、ピアノ協奏曲とかがあったと思う。クラリネットもライスター、ウラッハ、ブライマーとか。

その時、北川くんに「お前、これ聴けや」と本当に強制的に聴かせたのだけど、本人いわく、それが音楽の道に進む原体験であったと。

僕はその後も帰省するたびに親から小遣いをもらい、心斎橋や富田林のダイエーにCDを買いに行き、クラシック、それもモーツァルト三昧となった。買う本も漫画以外はモーツァルト関連ばかりで、歴史の授業は好きじゃなかったけど、18世紀後半のヨーロッパ史にばかり詳しくなって。

ちなみにモーツァルトの時代は、フランス市民革命の真っ只中で、フリーメイソンなる組織などが形成され、モーツァルトや詩人ゲーテも会員で(「すみれ」という歌曲はゲーテの詩であり、それを聴きたいがためにエディト・マティスによる歌曲集を買った)、貴族から市民まで平等に交流できるサロンが台頭していた。「フィガロの結婚」は貴族を揶揄する内容だったため、上演が禁止されていた。

僕はそこで「革命」って言葉にどこか反応していたのか、いわゆる「民主化」の意味で今も「革命」という言葉を使ってしまっている。ITは情報の民主化、AIは専門性の民主化、みたいな感じで。

モーツァルトの音楽もまた、それまで王族・貴族のためにあったものが市民へと広く浸透し、ラテン語やイタリア語に限定されていたオペラなどもドイツ語で作られた。それが「魔笛」や「後宮からの誘拐」であった。

僕は大学時代にちょっと「共産主義革命」みたいなのに興味を持ったものの、今の北朝鮮やかつてのポル・ポトなどを見てわかる通り、民主化とは真逆な社会を形成してしまったことに幻滅し、思想的にも保守になったのであろう。

ともかく、あの当時、モーツァルトを軸に音楽だけじゃなく、歴史や思想を学んだ背景があり、それが今もどこか影を落としているわけなんだ。

話を戻そう。高校時代はモーツァルト一辺倒で、高校卒業した年、モーツァルト没後200年とかで騒がれ、大学生となりザルツブルクを旅しようと思っていたら、まさかの浪人。そこでどこか反骨精神からジャズのCDを買ってしまい、それがソニー・ロリンズの「サキコロ」、ビル・エヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」、エリック・ドルフィーの「ラスト・デイト」であったのは完全なるジャケ買いだったにもかかわらず、それはジャズ史上の名盤中の名盤であったことで、やはり「出会い」は必然だったかと。

それからはジャズに傾倒し、気がつけばジャズレーベルを主催するようになったのだけど、昨年、モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ」を吹き込むなんてジャズにあるまじきアルバムを作ってしまった。それもヴィオラ・パートをクラリネット属のバセットホルンに変更し、鈴木孝紀さんのクラリネット、北川くんのバセットで吹き込んだわけだ。それが今回のパンフにも、しっかり記載されている。
中学生の伏線回収した日 2025.7.21_b0002156_15182276.jpg

さらに今年は鈴木孝紀さんによるモーツァルト・クラリネット五重奏曲と、ウィズ・ストリングスによるジャズのアルバムもまもなくリリースすることになっている。

そして今日のコンサート。モーツァルトと唯一肩を並べるブラームスの五重奏曲。これも僕は何度も何度も聴いた。冒頭のチェロの上昇音では、いつも胸を締め付けられる。

というわけで、このコンサートなり、リリースするアルバムなり、それはすべて中3の夏の原体験から出発しており、それもあの時の合宿中の「無理やり」がちょっとは影響していたと思うと、感慨深いし、人生ってのは何かに導かれていると実感せざるを得ないのであった。
中学生の伏線回収した日 2025.7.21_b0002156_15181648.jpg

演奏は言うまでもなく素晴らしく、フランス管ながらドイツ管のような美音を奏でる北川くんの演奏に、会場は陶酔していた。それも300人以上のお客さんによる満員御礼で、文字通り「祝福」の時間を過ごすことができたのだ。その陰には奥様の存在が大きく、いろいろあったけど、北川くんも良かったよね〜。
中学生の伏線回収した日 2025.7.21_b0002156_15182066.jpg

ロビーでは懐かしい顔にも会うことができた。北川くんと同期の女性。まったく変わってなくて笑った。

前列で一人スタンディングオベーションする男性が知人に似ていた。一緒に行ってた絵美さんも知ってる知人なので、二人して同じことを思っていた。笑ったのだった。

なつみさんも5人で来られていた。昨日今日で何やらまたインスパイアされたとのこと。面白い展開となるのかもしれません。

カルテットのうち3人は鈴木さんのレコーディングでもお世話になっており、ご挨拶できた。また改めて何かできればいいですね〜。良き日々を送っております。ありがとうございました。


by katamich | 2025-07-21 23:39 | ■音楽 | Comments(0)