面白かったので一気に2回も読みました 2005.8.2

 「水上バス」の社会実験も後半に入り、あとちょっとです。毎日、毎日、表には表れないトラブルが発生しては、それを解決し、そして事務所でビールを飲むという楽しい毎日です。残り2日です。頑張ろう。打ち上げがものすごく楽しみですっ!

 ところで、後半戦に入ってからは潮の満ち引きの関係で、便数が減り、おまけに西戸崎・海ノ中道という人通りの少ない場所ですので、結構、暇な時間が出来てしまいます。その間は仲間といろいろ語り合ったり、学生相手に馬鹿話をして楽しむのですが、昨日、今日と久々に本を読みました。昨日から読み始めて、昨日のうちに読了。今日は2回目を一気に読んでしまいました。
 
 神田昌典著「人生の旋律」

という本です。神田昌典氏は経営コンサルタントであり、いわゆる「成功オタク」なら誰でも知っています。その神田氏の新著で、私は出てすぐに買いました。経営コンサルタントの本と言っても、よくある成功本の類ではなく、「近藤藤太」という実在した人物に関する評伝です。結論から言うと、面白くって一気に読んでしまいました。
 
 さて、「近藤藤太」とはどんな人物なのでしょうか。私を含め、一般的にはあまり知られていないと思います。ネットからプロフィールを拾ってみると、

国際トラブルシューター。1916年、東京芝白金に生まれる。父親の転勤のため3歳から4年間ニューヨークで生活する。5歳で「建設的なケンカ」をし、幼少ながらも「欧米人に勝つ」という意味を悟る。慶応義塾大学経済学部卒業後、マッカーサー総司令部国際貿易部勤務。付加価値の大きなニコン、ミノルタなどのカメラ、時計、精密機器の輸出業を行う傍ら英語を猛勉強する。1950年、貿易会社「KONDO&CO.」を設立。「英国海陸空軍協会」の日本購買代行に任命され、日本の代表的商品の買い付けを行うなど貿易の振興をはかる。1955年より32年間、故岸信介総理大臣の渉外担当側近を務める。持ち前の語学能力をいかして世界各国のお偉いさんを相手に総理の右腕として活躍する。1970年、貿易会社をクローズ。世界35カ国をわたり歩いた経験をもとにコンサルタントとなる。故岸信介総理の指示で自民党の代議士(安倍晋太郎・中島源太郎・渡辺美智雄・森山欣司氏など)の国際コミュニケーション・トレーニングを担当する。その後、国際企業大手100社(BS・三井・JAL・博報堂・東京電力など)の管理職教育ならびにトラブルシューターを行う。1988年、豪州ゴールドコーストに移住し豪州市民権を獲得する。以来「大名」と呼ばれ、日豪親善に没頭。国際トラブルシューターとして活躍しながら、妻とともに幸福で健康、そして豊かな生活をエンジョイする毎日を送り、2004年11月14日、88歳で大往生。

 簡単なプロフィールですが、すごい経歴ですね。しかし、本書を読むとそのすごさが圧倒的な迫力で迫ってきます。簡単に箇条書きすると、

・富豪の家系に生まれるが、10歳の時に父が事業で失敗し、父逃避により、どん底の生活を送る
・ヤクザ稼業に身を落とした後、更正し慶応義塾大学入学
・学資稼ぎのために始めた音楽バンドが大ヒットし、ブロマイドが飛ぶように売れる
・太平洋戦争開始後、志願して陸軍に入隊
・金日成の捕殺の任務に就く
・戦後はGHQ、マッカーサー元帥の元で働く
・朝鮮戦争勃発を機に商社を創業し、大成功する
・その後、ポンドショックで破産し、巨額の借金を抱える
・岸信介元首相の下で働くとともに、「NHK英語講座」のキャスターを務めるなどしながら借金を完済
・72歳でオーストラリアに移住し、3人目の奥さんとともに悠々自適の生活
・88歳で癌により死去

 神田氏の視点は、「20世紀の巨人」を紹介したいだけではありません。「日本経済は70年周期で周っている」という仮説のもと、70年前の大正・昭和の時代をワガモノに生きた、近藤藤太という巨人の生涯を反すうすることで、現代を正しく見通そうという意図があります。現代という時代は70年前と同じく、一歩先をも通せないほど、混沌と激動の時代にあります。そん中、我々はどのように生きていけばよいかを、近藤藤太(トウタ)の人生を振り返りながら、参考にすることが出来ます。

 本書の前半は、トウタが富と貧困の生活を経て、太平洋戦争に至り、終戦後、多くの兵士を率いて、北朝鮮から無事に南朝鮮(韓国)まで逃げ延びた半生を描いています。とりわけ、北朝鮮から脱出する場面の描写がスゴイです。とにかく、紙一重のところで生き延び、行き続けます。つまり、とことんツイてるのです。

 本書の後半は、戦後のトウタのサクセスストーリーを描いています。まず、軍部情報部に勤めるのですが、英語のできるトウタは、司令官とともに米軍の幹部を訪問します。するとそこにはカルフォルニア大学の学友がおり、一気に信頼を勝ち得ます。その後はGHQへの推薦状をもらい、そこでも影響力を発揮したあと、事故を機に本国(日本)で「商売」を始めるのですが、これがまた大当たり。そして人脈が人脈を呼び、瞬く間にビジネスのスターダムにのし上がるのです。こんな一文があります。

 「人間は考え方で人生が決まる。でも残念なことに、多くの人は、自分なんえできない、自分なんてそれに値しないと決めてしまうの。自分で自分の能力に制限をかけちゃうのよ。」
 
 トウタの成功には「自分に制限をかけなかった」ことが大きいのです。そしてまた、こんな文章があります。

 「人生が新しいステージに行く時には、いくつかの進級テストがある。そのテストのことを多くの人は障害という。障害は避けようと思えば避けられる。だが、避けてしまった場合、進級テストにはパスしないのだから、結局、同じステージに留まることになる。やっかいなのは、テストはたいていの場合、抜き打ちでやってくるということだ。」

 そうなんですね。「障害」とは「進級テスト」なんですね。人生の場合、なるべく苦労はしたくない、苦労しない人生に越したことはない、という人がいるのですが、半ば納得しながらも半ば釈然としないところもありますね。でも「苦労=障害」と考え、背を向けるのではなく、「苦労=障害=進級テスト」と考えることで、前向きに立ち向かっていくことが出来ますよね。トウタももちろん、成功の道のりにおいては、様々な進級テストにパスしてきたのでしょう。

 トウタの人生に停滞はありません。事業に成功したかと思うと、為替のショックにより一気に破産。これなど、現代の大企業が一気に崩壊していく事実によく整合していますよね。でもトウタは決して腐ることなく、百科事典の営業というゼロからのスタートを選択し、もちろん大成功。借金取に追われる傍ら、決して身がくれすることなく反対にテレビでの英語講座のキャスターを務めるなど、とことん前向きに人生を演出していきます。

 何があってもおかしくない現代ですが、そんな時代だからこそトウタの生き方は大いなる参考になります。本書はただの人物評伝でありながら、現代に通用する「成功法則」がいたるところに散りばめられてあります。

 自分を成長させる、より大きなツキを呼び寄せるには、自分より大きな存在と一緒にいる、大きなツキを持っている人と一緒にいることが重要ですが、本書にはついぞ現れない「スゴイ」人物が描かれており、読むだけで「大きな存在」「大きなツキ」を得ることが出来る気がします。

 とにかく、面白くてためになり、そして勇気が出る一冊でした。一気に2回続けて読んだのは本当に久しぶりでした。明日も「水上バス」。なんの本を読もうかな~(笑)

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(近藤藤太)
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by katamich | 2005-08-02 21:48 | ■読書・書評 | Comments(0)