やさしさをテーマとした物語 2005.7.14

 私の滝仲間であるK君が導師から「優しさをテーマに物語を書いてみてはどうか」と課題を与えられており、日々、頭を悩ませているようです。彼の仕事面でも「優しさ」について考えることは大きな意義があると思われます。ただ、、、相変わらず観念的に走りがちで、なかなか物語本文に入っていかないようです(笑)。でも、ブログ自体は結構人気のようで、毎日多くのコメントがついています(私のよりもはるかに多いようです。アクセス数は負けてないと思うけど・・・)。本人からは「ダメ出し大歓迎」と言われていましたが、ダメ出しして終わりではちょっと楽しくないので、私も一つ書いてみようかと思います。以下は私の実体験をベースにしたフィクションです。

「おばあちゃんの悲しそうな顔」

 久太郎はすることがなくなって、家に引きこもっていた。

 大学を中退して仕事もしていない。毎日、夕方に「金八先生」の再放送を見ることだけを楽しみに生きている。心の穴を埋めるのに彼女もおらず、金もないので友達と遊ぶこともできない。そもそもこんな状態では友達に会うのも恥ずかしい。だから自然と引きこもってしまっている。
 
 とある日、大学の恩師から電話がかかってきた。

 「久太郎もすることがなかったら、しばらくボランティアでもしてみたらどうだ。知り合いの施設を紹介するから。」

 ボランティア。考えてなかったけど、そんな選択肢もあったのか。せっかくの恩師の誘いに断る理由もないし、今の悶々とした引きこもりの状態からどうにか抜けられるのなら、ボランティアでもなんでも喜んでやってみたい、と久太郎は素直に思った。

 さっそく翌日から隣町の老人ホームにボランティアに行った。その老人ホームにいる老人のほとんどが介護が必要な人で、一人では歩くことも、トイレに行くこともできない。なのでボランティアは大助かりなのだ。林婦長が久太郎を紹介する。

 「みなさ~ん、今日からボランティアに来てもらうことになった久太郎さんで~す。」

 か細い声で「よろしくおねがいします」という人もいれば、笑顔だけ向けてくれるおばんちゃん、マイペースに歩き回っているおじいちゃんも、、、とりあえず久太郎は挨拶ができた。久太郎は当然、介護の専門的知識も経験もないので、おじいちゃん、おばあちゃんの車いすを押して移動するのを手伝うことが中心だった。始めての久太郎には戸惑うことも多かった。

 「久太郎さん、ちょっとそこに置いといて」(置いといてって、モノじゃないんだよ)
 「久太郎さん、橋口のおばあちゃん運んできてくれる」(運ぶって・・・)

 ホームの職員のセリフに違和感を覚えるくらいはまだ序の口だ。男性が廊下を歩いているにもかかわらず、見えるような位置でおばあちゃんのオシメを換えたり、オシメを換えているすぐ横で食事を取らせたりもする。そんな環境に職員はおろか、入所者の老人たちも完全に慣れてしまっている。いつも優しそうにニコニコしている林婦長も、職員のそんな態度に何も言わない。

 老人たちは尊厳をおろそかにされ、あたかもモノのように扱われながらも一方で、人一倍ふれあいを欲していることが久太郎には痛いほどわかった。久太郎が来ると手招きをすして手を差し伸べてくる。手を握ってあげると、しばらく離そうとしない。

 「手がぬくいね~。手がぬくい人は心が冷たいのよ(笑)」
 「おねがいします、おねがいします」
 「車の運転がしたいね~。どこかに連れて行ってくれるかな」
 「お兄ちゃんは将棋が好きか」
 「結婚してるの?両親は元気?兄弟は何人?学校は行ったの?」
 「久太郎さんが来てくれて嬉しいわ~」

 ホームの老人たちは久太郎らボランティアに対してはとりわけ心を開くそうだ。しかし職員のことを責めることはできない。彼ら、彼女らは多くない人数で食事の世話からトイレの世話、入浴、運動、全ての生活動作の援助をする。一人ひとりの話し相手になっていれば、とてもじゃないがまわらない。たまに来たボランティアごときにわかってたまるか、というのが彼ら、彼女らの言い分にもなろう。久太郎もそれは理解するしかなかった。

 ある日、月に一回の外出日に久太郎も付き添うことになった。利用者一人数千円のお小遣いで、近くのショッピングモールに行くのだ。当然、車いすが必要な人達ばかりなので、その分、職員やボランティアも必要となる。久太郎は南のおばあちゃん担当になった。南のおばあちゃんは老化に加えて、事故で半身不随になっているので、話をするのも一苦労だ。久太郎は南のおばあちゃんの話に一生懸命耳を傾けながら、車いすを押し続けた。みんなで食事をしたあと、めいめいが好きなものを買いにわかれる。南のおばあちゃんは手ぬぐいと下着を買っただけで、後は車いすに乗りながら嬉しそうに久太郎に話かけていた。外出の時間もあと30分。南のおばあちゃんは急に「饅頭が欲しい」と言い出したので、久太郎は連れて行った。南のおばあちゃんは自分で財布を握れないので久太郎が代わりにお金を払ってあげることになる。南のおばあちゃんは、饅頭を30個買いたいという。はっきりと30個と言ったので、久太郎は戸惑いながらも30個分のお金を払って饅頭を南のおばあちゃんに渡した。

(よほど饅頭が好きなのだろうが、まさか一人で食べるわけではあるまい。後生大事に取っておくには日持ちもしないだろうに。同室の人におすそ分けでもするのかな。)

 全員がホームに帰りついたとき、南のおばあちゃんが何か言っている。

 「まんじゅうを、、、ふたつ、とって、、、きょうはありがとう、、、ございました」

 南のおばあちゃんは今日のお礼とばかりに私に饅頭をくれるというのだ。しかし久太郎は躊躇した。

(自分なんかに饅頭を渡さないで、同室の人たちと楽しく食べればいいのに。そもそも年金と介護保険の中から細々と生活しているおばあちゃんからものをもらうのは気がひけるよ。。。)

 久太郎は聞こえないふりをして、饅頭を受け取らなかった。久太郎の気遣いなのだ。おばあちゃんが悲しそうな顔をしているにも気づかずに。そこで突然、林婦長がいつもの明るい声でこう言った。

 「あら、久太郎さんが要らないのなら私がもらうわよ。」

 そう言って南のおばあちゃんから饅頭を二個余分にもらい、さらにこう付け加えた。

 「でもこんなに食べちゃあ、太っちゃう。久太郎さんが食べて。」

 その時、久太郎は南のおばあちゃんが悲しそうな顔をしているのに初めて気がついた。

(そうか、南さんは饅頭をオレにあげることが幸せだったんだ。誰も一人で饅頭を食べたいわけではない。饅頭を通してみんなとふれあい、楽しさを共有したかったんだ。そんなこともわからずに変な気遣いをしたオレは馬鹿だった。人の心がまったくわかってない。優しさというのは独りよがりじゃダメなんだ。相手が何を求めてるのか心から理解して、それに応えてあげることが本当の優しさなんだ。オレは偉そうに職員の不満を思っていながら、南さんの心をまったくわかってなかったじゃないか。林婦長さんはやっぱりすごい人だ。)

 久太郎は翌日、真っ先に南のおばあちゃんの部屋に向かった。

 「南さん昨日はお饅頭ありがとう。とても美味しかったよ、ごちそうさま。」

 南のおばあちゃんの顔がパッと明るくなったのを見て、久太郎は涙が出そうになった。

(以上)

 まあ、こんなところです。細部はともかく私の実体験がベースになっているので、割と書きやすかったです。そう言えば前にもその話を書いていましたね。よほどショッキングな出来事だったんでしょう。この話から私が「優しさ」について考えたのは、「優しさは独りよがりではダメ、相手の心をきちんと理解してこその優しさなんだ」ということです。
 
 物語風に書くのは初めての試みでしたが、結構、楽しかったので、いつかまた別のテーマで書いてみたいですね。

 話は変わりますが、今日はドラマの「電車男」の日でした。ワンクールはこの「電車男」の話が度々出ますので覚悟していてください(笑)。今日もかなり面白かったです。電車男役の伊藤君がかなりはまり役なのと、原作には出てこない脇役がかなり面白いですね。電車男の直属上司のキャラなども最高です。今日のでとりわけ良かったのが、電車男がヒロインであるエルメスとのデートに出かけるシーンで、懐かしいCCBの「ロマンティックがとまらない」が流れたところです。いい選曲です。私の方までテンションがあがってきました。電車男、来週も頑張れ!!

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(写真は電車男 ← ウソです、K君ごめんね~)
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Commented by 03 at 2005-07-15 19:08 x
お疲れ様です。Kです。。。
いやいや、思っていることを出力することの難しさを痛感する日々です。

”思ったことを素直に表現する”ということが、下手だということを知りました。。。
気長にがんばってみまーす。

TB、ありがとうございます。。。
Commented by katamich at 2005-07-16 13:10
ネタに使っちゃってごめんなさいね(^^;
毎日の更新楽しみにしてますよ。
by katamich | 2005-07-14 23:07 | ■人生哲学 | Comments(2)