昭和なお好み焼きで締めくくりだよ 2021.8.22
2021年 08月 22日
から拾った写真。
福山駅から北東へ徒歩12分ほどの「さとうお好み焼き店」にお邪魔した。 駅からお店までの道のりには、両備軽便鉄道の廃線跡や、江戸時代に整備された福山城下町の旧水道や寺院を集中配置した地区など、見所が多い。風情ある水路沿いを歩くのは気持ちよかった。 「さとうお好み焼き店」は、おそらく店舗兼住宅だろう。外観上、店名がわかる看板類は一切ない。出入口にオタフクソース提供の「お好み焼き」と染め抜いた紺色の暖簾が掛けられたときだけ、そこにお好み焼き店らしきものがあることを察知することができる。 お店には、感じの好いお姐様お一人がでていらっしゃった。客が話しかけない限りはお姐様のほうから無駄口を利くことはない。 店内は狭く、調理用鉄板台も小さめ。一応、腰掛けはそこに5脚並んでいるが、同時に食事ができるのはせいぜい3人がいいところだろう。客席は他に、壁に向いた鉄板が無い席が3席くらい。 お水はセルフサービス。 お品書きを見て「肉玉・そば」(420円)をお願いした。低価格だ。そば入りを吉備国では「モダン」と呼ぶことも多いことを思えば、どちらかというと安芸国風のお品書きだと思った。暖簾も安芸国のオタフクのものだったし、豚肉のことを「肉」と表記するのも安芸国風。ならば順当に重ね焼きだろうと思っていたら、これが混ぜ焼きで、意表を突かれた。 調理はざっと次のとおり。 そばを鉄板でかるく温めておく。 ボウルにて、小麦を溶いた生地、おそらく玉子、キャベツ、天かすといったものが混ぜ合わされ、上には豚肉が載っている。これを鉄板へあけ、円盤状に整える。豚肉は上手く最上部に載ったままで、内部に潜り込んではいない。 その上に、かるく温めていたそばを載せて合体させる。青海苔と黒胡麻を振る。紅生姜を載せる。 暫し放置した後にひっくり返し、また暫し放置。 もう一度ひっくり返して正位に戻し、刷毛でソースを塗り、魚粉、青海苔を振って9分間ほどで完成し、提供された。 粉が多めで駆体は比較的薄めに仕上がっているぶん、口にするとネッチリと密度が高く重め。一方でキャベツは厚みのある根元に近い部分が積極的に用いられていた上、切り方は極太、加熱は浅めなので、キャベツのザクザクとした歯応えとフレッシュさが、メリハリを付けてくれていて、意外と好ましい。そばは、反転中に生地が垂れて隙間を埋めて固めるように働いたのか、コテを入れても一体感があり、簡単に綺麗に切り出しやすく、食べやすい。それでいて上面はこんがり香ばしく、そばとしての存在感をちゃんとあらわしている。 生地に混ぜ込まれたのであろう加熱された玉子らしき風味と、ソース、魚粉、天かすなどの味のコンビネーションがしみじみとよかった。 過去に訪問したことがあるお好み焼き屋さんに、「きむら」(広島市南区京橋町)、「みよし」(岡山市北区伊福町)、「みちぐさ」(広島県福山市西町)、「きはら」(岡山県笠岡市中央町)といったお店があるが、お店の雰囲気やお好み焼きの味わいがなんとなくこちらとも相通ずる点が多いような気がした。これらには、混ぜ焼きのお店も重ね焼きのお店もあるのに、近い味わいがあるように感じるとは面白いと思った。 このお店の滞在中、お店で使うそばや雑誌がそれぞれの業者さんから届けられ、お姐様とやりとりする場面があった。その様子から、しっかりした信頼関係が築かれているのだろうと感じられた。