コーチングの勉強会は「質問のスキル」 2005.6.21

 今日は夜に、月一のコーチング勉強会があったので出席してきました。私はこの会の幹事を引き受けており、今日は会の進行役をしました。今日のテーマは「質問のスキル」です。コーチングの3大スキルとして「聞くスキル」「承認のスキル」そして「質問のスキル」があります。

 今日は私からのリクエストで「質問のスキル」となりました。3大スキルのうち、「聞く」と「承認」はなんとなく受動的であるのに対し(本当は違うけど)、「質問」は唯一能動的な行為のように見えます。「質問」とは学校で生徒が先生にする質問をはじめ、会議、議会答弁、インタビュー、そして日常会話全般についても広く「質問」が使われています。日常会話は別として、とりわけフォーマルな場において、私は「気持ちのいい質問」に出会ったことがほとんどありません。議会答弁などは完全な揚げ足取りの応酬だし、インタビューなどはややもするとゴシップ探しのようにも聞こえます。

 しかし、我々にとって最も日常的な「質問の場」はやはり会議でしょう。会議においても私は「気持ちのいい質問」に出会ったことがほとんどありません。あえて前の会社のことを出すと、営業会議などはまるで尋問か糾弾または攻撃のようでした。とにかく答えられなくなるまで質問して、答えに詰まると集団でのダメだしが始まります(ダメだし会議ですね)。例えば営業トークでは1から10までの行動段階があったとして、「1はクリア」「2もクリア」「3もクリア」、、、「4は出来ませんでした」となると「何でやらないんだ~」とダメだしが始まります。例え「9」までクリアしたとしても「10」で詰まると、「何でやらないんだ~」となります。極端な例ですが、おおよそこんな感じの会議が多かったように思います。

 ものすごくストレスがたまります。でも、こんな会議をしている会社って結構多いのではないでしょうか。上司という存在は「ダメだし」をすることこそが「仕事」と勘違いしている傾向が強く、逆にほめようものなら自分の存在価値を失うとでも思うのでしょうか。「1」から「4」まで「も」出来たんだ、ではなく「1」から「4」まで「しか」出来なかったと考えるのが上司の適正と勘違いしてるんですね。コーチングはそれとは全く逆です。

 よくとられる例に、「コップの水」の例えがあります。コップに水が「半分」入っていると、コーチングでは「半分しか」ととらえるよりも、「半分も」ととらえる方が有効なことが多いです(もちろんケースバイケースですが)。なぜなら、「半分も」とととらえた方が「気分がいい」からです。そして人間と言うものは「気分がいい」方がポテンシャルが有効に引き出されるものです。

 やはり「気分をよくする」ことを前提に質問したり、会議を進行したりする方が、質問される側やメンバーも前向きなアイデアや気づきが得られやすいと思います。では今日のテーマでもあった「質問のスキル」においてコーチングではどのようなアプローチをするのでしょうか。今日の勉強会からピックアップしてみたいと思います。

 クライアントの目標設定は「夏休みにヨーロッパ旅行に行きたい」でした。

コーチ   :では、あなたが今年の夏にしたいことなって何ですか?
クライアント:今年はぜひともヨーロッパに一人で行きたいです。
コーチ   :具体的にはどこですか?
クライアント:バルト三国です。
コーチ   :旅行するのに何か問題となっていることがありますか?・・・①
クライアント:仕事で時間が取れるか、資金繰りは大丈夫か、ツアーに一人で参加して他のメンバーと打ち解けられるか、言葉は大丈夫か、飛行機が苦手などが心配です。
コーチ   :中でも一番の問題はなんですか?
クライアント:ツアー客と溶け込めるかです。
コーチ   :どうすれば溶け込めるでしょうか?
クライアント:自分をアピールできればと思うのですが、私は趣味は多いのですけど、PRできるほどのものってない気がするんです。(他にもたくさんお話されました)
コーチ   :今のことをPRすればいいじゃないですか。
クライアント:あ、そうか。・・・②
コーチ   :他にも問題があるようですが、それらは実際のところ本当に問題ですか。
クライアント:言われてみれば、全てクリアできそうです。・・・②´
コーチ   :では夏休みは旅行に行けたも同然ですね。
クライアント:実はちょっと心配もあるのです。・・・③
コーチ   :それはなんですか?
クライアント:10月に前から準備している試験があるのですが、それを考えると旅行どころではないのかな、と。
コーチ   :今の準備段階で試験にパスする確立は何%ぐらいですか?・・・④
クライアント:10%くらいでしょうか(笑)
コーチ   :頑張れば何%くらいには出来そうですか?
クライアント:50%くらいには。
コーチ   :そのためには何をすればよいでしょうか?
クライアント:今は毎日、一時間半でも想定問答などをおさらいしています。
コーチ   :ほう、それは素晴らしいですね。・・・⑤
(中断しました)
 
 簡単ですが以上が、30分ほどのコーチングのエッセンスをまとめたものです(もちろんもっといろんな質問がありましたけど)。なんてことのない会話のようですが、重要な点がいくつかありますよね。数字にしたがって見てみると、

①・・・バルト三国というマイナーな国のことは聞きたくなるんですが、そこはあえて聞かずに目標達成のための問題点のおさらいをして、頭の中の整理を促しています。
②②´・クライアントにしゃべるだけしゃべらせて、フィードバックを促すことで、考えていたものの重要性や問題性が自己了解できました。
③・・・でました、本音。クライアントは多くの場合最初に本音を言いません。だから「質問」のスキルが大切なのです。本音を引き出さずに最初の言葉だけで会議や相談を進行させてしまうことによい実りはありませんよね。
④・・・普通は「何の試験」かが気になりますが、クライアントの知っていることなどあえて聞く必要もありません。「気づき」を促すことが重要なんですね。そして数字でイメージしてもらうこともテクニックのようです(それに偏ると嫌らしいですけど)。
⑤さりげなく褒めています。クライアントに自信を持ってもらいましょう。

 「夏休みにヨーロッパを旅行したい」というさほど深刻度が高くない(笑)テーマでも、コーチングでは立派なテーマとなります。とにかくコーチは質問内容に私情や興味、価値判断を挟まずに、終始クライアントに委ねた質問にしています。その結果、クライアントはどのようなアウトプットを得たでしょうか。
 
 この日のクライアントいわく、「問題点が整理できた」「本音が言えてスッキリした」「気分がよくなった」ということでした。短時間のコーチングでしたが、とてもよい結果が得られたようです。

 ついでなんですが、「最悪のコーチング」を勝手にシミュレートしてみたいと思います。

コーチ   :では、あなたが今年の夏にしたいことなって何ですか?
クライアント:今年はぜひともヨーロッパに一人で行きたいです。
コーチ   :具体的にはどこですか?
クライアント:バルト三国です。
コーチ   :なんでバルト三国なんですか?イタリアとかフランスとかじゃなくて。
クライアント:(大きなお世話じゃ、どこに行こうと勝手やろ)中世のまちなみに憧れているんです。
コーチ   :なぜ中世なんですか。・・・①
クライアント:(そんなこと聞いてどうなるねん)なぜと言われても。。。。

コーチ   :旅行するのに何か問題となっていることがありますか?
クライアント:仕事で時間が取れるか、資金繰りは大丈夫か、語学は大丈夫か、ツアーに一人で参加して他のメンバーと打ち解けられるか、言葉は大丈夫か、飛行機が苦手などが心配です。
コーチ   :時間や資金繰りは基本的な問題でしょう。ツアーで語学の心配はないでしょう。飛行機って乗り物の中でいちばん安全なんですよ。ツアーに誰か伴侶を連れて行けば解決するんじゃないですか。・・・②
クライアント:。。。。。。

コーチ   :では夏休みは旅行に行けたも同然ですね。
クライアント:実はちょっと心配もあるのです。
コーチ   :それはなんですか?
クライアント:10月に前から準備している試験があるのですが、それを考えると旅行どころではないのかな、と。
コーチ   :それは何の試験ですか?・・・③
クライアント:え~っと、(言いにくそうに)○○の関係です。
コーチ   :何年間勉強してきたんですか?
クライアント:3年ちょいです。
コーチ   :今の準備段階で試験にパスする確立は何%ぐらいですか?
クライアント:10%くらいでしょうか(笑)
コーチ   :ええ~、本当にパスしたいんなら旅行なんかしてる場合じゃないでしょう。・・・④
クライアント:。。。。。。

 あえてこの会話のおさらいをします(笑)

①・・・個人の趣味の領域の話にいちいち首を突っ込まない!!(いちいち興味を持たない)
②・・・そんな浅薄な話されてもねえ。第一、伴侶って、、、一人で行きたいって言ってるでしょ!!(余計な提案はしない)
③・・・なんであろうといいじゃない。もし言いにくいことだったらどうするの。(クライアントの知ってる情報についていちいち詮索しない)
④・・・あんたと話して時間の無駄だった。(自分の価値判断を押し付けない)

 極端かもしれませんが、上のコーチングと下のコーチングを見比べてみると、実は下の方がごく一般的に聞こえませんか。書いている私でも、上のコーチングは思い出すのに必死でしたが、下のコーチングは実際にしゃべるかのように出てきました(笑)。つまり我われはいかに「気分の悪い質問」を普段しているかなんですよね。

 「気分をよくして」→「気づきを促して」→「答えを自分の中から引き出す」がコーチングの目的だとすると、コーチングって簡単そうに見えて結構難しいことがわかるでしょう。やっぱり勉強、練習が必要なんですね。才能もあると思いますけど。

 そんなことで今日も有意義な勉強会でした。次回もまたレポートしますね。

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(今日は満月の夏至でした。これから暑くなるけど日が短くなるセンチメンタルな季節になります。それよりも梅雨なのに雨が降らないぞ~)
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by katamich | 2005-06-21 01:19 | ■NLP・コーチング | Comments(0)