「人間はこんなものを食べてきた」 2004.9.6

 今日は朝6時半に家を出て、いつもの山川町で一日ワークショップでした。9月の間にあと5回あります。いい勉強をさせてもらっています。

 ところで、先日からのシュールの話の続きなんですが、今日、ネットサーフィンをしていたら、面白い本にめぐり合い、早速会社の帰りにジュンク堂で購入しました。

・小泉武夫「人間はこんなものを食べてきた」(日経ビジネス文庫)

 これは非常に面白いです。小泉武夫という人は今まで読んだことがなかったのですが、まさしく「私向け」の著者であると言えます。この本は、大学で教えている「食文化論」をベースに編集されていますが、「講義」といった堅苦しい内容ではなく、良質のエッセイ集を読むようで、そんじょそこらの似非エッセイストなんか全く太刀打ちできない内容の濃さと読みやすさです。

 著者はこれまで世界各国でありとあらゆる「ゲテモノ」を食べてきたそうで、その一つにシュールストレミングもあげられていますが、世の中にはもの凄い食べ物があるものですね。面白いのがイヌイット料理の「キビャック」。なんでもアザラシの腹の中に海燕を詰め込み土の中で発酵させてどろどろになったものを食べるのだと。著者いわく「鼻が曲がるほど、猛烈に臭いけど、うまい」。植村直己氏は大好物であったとか。その他、韓国料理でエイを発酵させたホンオ・フェと言うのは強烈なアンモニア臭で食べながら涙をぽろぽろ流すのだという話。その二つが東西臭いものチャンピオンであると。そして我等がシュールストレミングも登場します。著者いわく、「チャンピオンというよりは、これはもう別格」であると。これは発酵が進んで缶がパンパンに膨れ上がって爆発の危険があるので、輸入禁止の代物であると本には書かれているのですが、我々が輸入したのはなんだったのでしょうか(笑)。それほど危険で臭い食べ物であると紹介されています。

 他にも私の大好きな「虫食い」の話も満載です。化石から古代の人は虫を常食していたとある通り、虫は人間にとって食の範疇にあるものです。「カブト虫の幼虫」をして、「これほどうまいものはない」とまで書かれています。すごいなと思ったのが、ヒルに牛の血を吸わせてパンパンに膨らせたものをボイルして半熟で食べるもの。ボリビアのある部族の話だとか。

 しかし、そのような単なる「ゲテモノマニア」ぶりを誇示するだけでなく、学者さんらしく、知的刺激に富む興味深い話もたくさん書かれてあります。宗教、マナー、語源、嗜好、など食を通して文化や人間の本質に迫るものです。
 
 小泉武夫。シュールストレミングを通して知った人ですが、他にも著書は多数あるようです。またしても、読まなければならない本が増えてしまいました。幸せです。そう言えばもうすぐミャンマーに旅立ちますが、そこでもこれらの本を参考に、「食文化」を生で体験してきたいと思います。幸せですね。

(写真はエチオピアではビジュアル的にゲテモノ扱い-本書より)

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by katamich | 2004-09-06 23:01 | ■読書・書評 | Comments(0)