楽しいコーチング同好会 2005.4.11

 今日は夕方、コーチング同好会の会合がありました。これはこれまで、福岡のプロコーチである鮫島氏のコーチング講座を受講した人からなる、ロールプレイを中心とした勉強会です。もちろん鮫島コーチも出席されます。今日も初対面の人が何人かいて、とてもフレッシュで楽しい時間でした。今月は新しい人30人と知り合うことを目標としていますので、すでに4分の1以上は達成したと思います。早い!。

 同好会のメンバーは鮫島コーチの講座を3ヶ月は受講していますので、コーチングのいくつかのスキルについては学んでいます。その中で今日は「聞く」というスキルを中心にロールプレイしました。私以外の人はそれぞれ同じ講座を受講されていたのでお互いを知っていたようですが、私は初対面です。なので簡単な自己紹介から始めました。まず私が自己紹介をし3分ほどで打ち切ったのですが、みなさんはとてもよくしゃべる~。参加者10人ほどで一時間以上かかってしまいました…。おかげで「聞くスキル」の練習をすることができました(笑)。
 
 さて、今日はどんな進行でしましょうか。通常の講座とは違い、その場その場でテーマを決められるところがいいところです。季節の変わり目か、受講生の中には私を含めて人生の転機を迎える人が何人かいました。そう、転職です。とりあえず私はまだ働いていますので、目下就職活動中というN氏に白羽の矢が立ち、N氏の就職活動を支援する意味でも、参加者全員による集団コーチングがテーマとなりました。10がコーチでクライアントが1というなんとも贅沢なコーチングですが、一歩間違えると「イジメ」です(笑)。N氏が言います。

N氏:いや~、私はコーチングをしてもらわなくとも、やらねばならないことははっきりしています。。。
コーチ:それはなんですか?
N氏:履歴書を書いて面接に行くことです。その後は会社の人事が決めますので、私にはどうもできないんですよ。
コーチ:人事に決めてもらうために、どのようなことをしているのですか?

(自然な流れでコーチングが始まりました。まずは鮫島コーチからです。)

N氏:経歴と資格と熱意をアピールしています。
コーチ:その3つのうち最もアピールできるのは何ですか?
N氏:う~ん、、、資格ですね。
コーチ:その資格はNさんにしかない資格ですか。その資格だけでも十分食べていけるのですか。
N氏:難しいと思います。
コーチ:ではどうしますか?
N氏:熱意でアピールします。
コーチ:どのようにして熱意でアピールするのですか?
N氏:採用してもらうように頼み込みます。
コーチ:どのように頼み込むのですか?
N氏:本音を出さず、人事に対して採用するよううったえかけます。
コーチ:本音を出してはいけないのですか?
N氏:面接とは本音を出す場ではありません。
コーチ:本音を出しては採用されないのですか?誰が言ってるのですか?
N氏:情報誌やハローワークで言っています。
コーチ:(…??)では本音を出さずにどのようにして人事にうったえかけるのですか?
N氏:熱意を見せるしかありません。
コーチ:(…。)失礼ながら熱意があるようには見えないのですが。
(注:↑実はここにくるまで何十回というやり取りがありました。文面だけでは誤解を生みそうなので注釈します。通常のコーチングではここまでは言わないのですが、クライアントであるN氏に対してはちょっとしたアクセントが必要と判断し、このように発言しました。)

 このやり取りは鮫島コーチとN氏によるコーチングのごく一部であり、実はこのようなやり取りは一時間以上にも及んだのです。とにかくコーチはN氏の内発的な気づき・発見を促そうと執拗なまでに質問をします。日常の会話ではここまで聞いてはしつこかったり、揚げ足取りのようにも感じるのですが、とにかく執拗なまでに質問をします。鮫島コーチは常に「コーチングとは非日常的な会話である」と言っています。ややもすると、コーチングとは上司と部下の人間関係、夫婦関係、友人関係、恋人関係など日常的なコミュニケーションのスキルの一部と思われるふしもありますが、実際のコーチングとはきちんとした仕切りのなかで、フォーマルな関係を保ちながら行うものです。例え親しい間柄であっても、コーチングの場においては、敬称・敬語の使用が原則となります。
 
 このまでの長いやり取りを我々参加者は「聞く」ことでいろいろな発見を得ましたが、実際のコーチング現場を垣間見ることによって、コーチングがいかに非日常的で、かつ難しいスキルなのかを十分に理解したと思います。

 しかしここで終わっては、参加者も物足りないもの。まずは私が「N氏の良いところ」と「質問」を述べました。N氏の良いところとは、いかにコーチングとは言え、執拗なまでの質問に良くぞ耐え抜いたという忍耐力。その忍耐は対人の仕事においてはとても貴重なスキルです。そして質問です。

私:就職するという目的に特化した場合、Nさんは「お金」「時間」「楽しさ」のうち順位をつけるとどうなりますか?
N氏:一番は「楽しさ」です。次に「お金」、最後が「時間」です。
私:では仕事が楽しければ、一日15時間以上働いても苦になりませんか?
N氏:楽しければ苦になりません。
私:では「楽しいこと」とは何ですか。
N氏:(N氏のキャリアの中からの話)
私:楽しいことはそれだけですか。キャリアも重要ですが、例えば、仕事からはなれて経験や資格などを取り除いた場合に何が「楽しい」ですか?
N氏:いろいろありますけど、面接の場ではそのような本音は伏せておくべきですよ。
私:楽しいことから自己分析、そして突破口が開けるかもしれませんよ。では私からは最後の質問です。「楽しいこと」を5つ思い浮かべると何が出てきますか?。私なら、パソコン、ジャズ、旅、滝行、瞑想ですね。(なぜか一同爆笑)
N氏:「これ」と「これ」と「これ」と「これ」と「これ」です。
私:それをあと20こくらいあげると、自分の適性や方向性、突破口を開くのに手助けになるかもしれませんね。(以上)

 私の場合は、まだまだコーチングの初歩の初歩ですが、とにかくN氏には楽しいイメージをもって元気になってもらいたかったのです。その後は、他の参加者もN氏に対し、「良いところ」や「提案」、「質問」などの発言が活発になり、大盛況のうちに勉強会が終わりました。N氏には若干気の毒な側面もありましたが、最後は元気になったと言っており、明日からの就職活動にはずみがつくことでしょう(祈)。

 ところで、私自身がどうしても気になった言葉があります。それは「本音」と「建前」です。「面接の時は本音を言ってはいけない」などの言葉です。確かに面接ではわずかの時間で人となりや仕事のスキルをアピールするために、多少の演技やハッタリは必要と思われます。しかし、仮に「建前」で採用が決まった場合は、逆に働き始めてからが大変だと思います。お互いのミスマッチが広がり、お互いのためにもならないと思われます。

 「本音と建前」論については、しばしば、日本と西洋の比較文化論などで用いられることがあります。つまるところ、西洋人は常に本音で生きているのに対し、日本人は「本音と建前」を使い分けるという論調です。しかし私は、本当にそうなのかな?と思います。私のごく少ない外国人との交流の経験からみると、西洋人の方がよほど建前が上手だと思います。例えば西洋人はいつも微笑んでいます。初対面でも必ず微笑んで握手を求めてきます。ちょっとでも親しくなったらすぐにハグをします。しかしそれは本音だろうか、といつも思います。逆に日本人はほとんどが仏頂面で、初対面ではお辞儀をしながら適度な距離を保ちます。むしろこの方が自然体のような気がします。「文化の違い」と言ってしまえばそれまでですが、私の一方的な自説では、西洋人は「微笑み」によって人間関係をベールに包んでいるのに対し、日本人は「仏頂面」によって適正な距離を保っていると言えます。つまりベールに包む方こそが「建前」であり、適正な距離を保つことこそが「本音」であると思われます。

 逆に西洋人から「微笑み」を除くとどうなるか。喧嘩になります。日本人から「仏頂面」を除くとどうなるか。仲良くなります。つまり、西洋人は本音で勝負すると喧嘩になるため、「微笑み」によって「建前」を取り繕っているのに対し、日本人は「仏頂面」という本音で生活しながら、相手を知ることでさらに別の「本音」をさらけ出す面があります。「酒を飲むと仲良くなる」「親睦会」「ノミュニケーション」なんてのはそれを言い当てていると思われます。つまりは、西洋人は「本音と建前の二極構造」であるのに対し、日本人は「本音と本音の二層構造」であると考えています。

 極端な言い方をすると、西洋人の「本音」とは「喧嘩」につながり(戦争の歴史、競争好き、そしてブッシュを見ろ!)、日本人の「(真の)本音」とは「仲良くなること」につながります。実は今回の勉強会が始まる前、鮫島コーチがこんな話をしていました。

「私が尊敬する日本を代表するコーチであるUさんは昔大手自動車会社の営業マンでした。若い頃はなかなか車が売れませんでした。ある時期、とても手ごたえのあるお客さんに会いました。何度もそのお客さんのもとに通い、車の説明をしては資料を置いていきます。お客さんは行くたびに「いいね~」と調子の良いことを言い資料を求めます。しかし、何度行ってもそれ以上発展しないのです。ある時、業を煮やして言いました。『お客さんは本当に車を買う気があるんですか!!』、と。するとお客さんは笑いながら、『ようやく本音を出したな』と言って、契約書にサインをしたそうです。そのサインは、、、当時のソニーの会長でした。U氏はその一件以来、営業に弾みがつき、何と年間360台を売るトップセールスマンになったということです。」

 つまり、「本音」がいかに大切か。もっと言うと「本音」がいかに武器になるかという話です。そうです。「本音」を出すことを恐れてはいけません。「本音」には無限の力が備わっています。特に日本人は先に述べたように、真の「本音」には人をひきつける魅力があります。言わば「本音性善説」です。そのためには「本音」をもっと磨きましょう。そして「本音」で勝負できるようになりましょう。そしてコーチの役割には、、、「本音」を引き出すことにあるのではないか。

 今回の勉強会は初対面の人も多く、非常に盛り上がって楽しかったのに加え、とても大きな気づきを得ることができました。次回からがまたまた楽しみです。(ただし5月はチベットでお休みで~す)

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Commented by teku at 2005-04-14 16:14 x
初めまして。ちょっと面白いと思ったのでコメントいたします。

私は会社を経営しています。
あまり大きくないので、自分で採用する人間を選んでいます。
その時に気をつけているのが「この人は本音を話せるかどうか」です。
どこかのハウツーモノに書いてある受け答えしかできない者、熱意だけで「がんばります」という内容のことしか言えないものは採用しません。
熱意は就職活動をしている者ならあって当然で「とにかく誰にも負けません」というようなセリフは聞き飽きているのが現状です。それよりも、やはり「人間」を見ています。多分、面接官は「こいつは腹の中でなにを考えているか分からない」という人間は採用しないですし、しかもそれを見抜く目は持っていると思います。
私のような者だけではないと思いますが、N氏はまったく逆を行っているように見受けられますね。

ですからkatamich氏が指摘していること「本音を磨こう」に全面的に賛成です。
本音が出せないというのは自信がないということです。
自信のある人間は、本音をやんわりと上手に出すことを知っています。

元気になったというN氏が無事就職できると良いですね。
Commented by katamich at 2005-04-14 22:37
>teku様
大変興味深いコメントありがとうございます。会社を経営されているだけに、一言一言がとても重みのある言葉に感じられます。
本音とか建前とかことを複雑にせず、本音一本勝負の方がシンプルでわかりやすいですよね。
「本音を磨こう」、、、自分で書いときながら、とても大切だなと思います(笑)
by katamich | 2005-04-11 23:57 | ■NLP・コーチング | Comments(2)