五年後の世の中 2004.11.26
2004年 11月 26日
一人で打ち合わせや営業に行くと、全体の3分の1くらいは雑談に費やすのですが、今日はこんな話をしました。
担当者いわく、「九重町はご存知の通り田舎で高齢化と若者の流出が進んでいる。定住奨励金など対策は講じているだけど、この先どうなるのだろうか」、と。
私はこう答えました。「5年後あたりから人口が増えるかもしれませんよ。なぜなら、IT化や宅配業界の発達で、必ずしも都会の真中に事務所を構える必要がない企業が増えると思いますから。そうなると心にも体にも悪い都会を脱出して、九重町のような癒しの地に事務所を構えたくなるでしょうね。我々コンサルなんてその典型で、パソコンさえあれば仕事できるのです。荷物は宅急便に電話すれば取りにきてくれますし、事務用品なども「アスクル」などに頼むと即日から翌日までには届けてくれます。郵便局も全国にありますし。書籍などはネットで買えますし、ネットの商店街を使えばショッピングもできます。私の理想は、田舎に一軒家みたいな事務所を構えて、庭には畑。広々とした空間で仕事して、頭が疲れたら庭に出てクワを下ろす。できたトマトをかじりながら。そうやるといいアイデアがたくさん出てくるでしょうね。それに事務所の賃料も10分の1には節減できるでしょう。世の中がそういう動きになれば九重町にも若い人が増えると思いますよ」、と。
これはまさに5年~10年後の発想です。「事務所は天神(福岡市のど真ん中)」とか「事務所は千代田区」なんてのはアンシャン・レジーム(旧制度)の発想です。
私はこれから先、5年~10年後をいかに見るかが勝ち組みに残るカギだと思っています。
今、売れている業界としては「高級車をはじめとした自動車業界」、「液晶ワイドやデジカメなどの家電業界」、「健康・美容の業界」、「いくつかのIT業界」などが代表です。これらは5年前から「今現在」の時代を予見していたことで勝ち組みに残っていると言えます。
一方、売れていない業界としては、枚挙にいとまないと思いますが、少なくとも我が「建設コンサルタント」業界は今が冬の時代であると思われます。我々の業界のマーケットはほぼ100%、官公庁(特に市町村自治体)です。しかし、市町村という団体は実は「5年は遅れている」のが現状です。
例えば、「新エネルギー」や「省エネルギー」などは現在、市町村が本腰入れて取り組んでいる課題ですが、この辺りは自動車業界や家電業界などがずい分昔から取り組んでいるテーマです(ちなみに「麻(ヘンプ・大麻)」を使った化石代替エネルギー(ガソリン、プラスチック、衣類等)など、民間サイドで根強く普及を進めていて近年芽が開きそうなところもあるのですが、役所の計画書に「大麻を用いたクリーンエネルギー開発の検討」なんて文言は今は絶対に書けません)。
少子化対策においても、駅前託児所やベビーシッター派遣事業など、とうの昔にベネッセなどの民間企業が取り組んでいることですが、最近、ようやく少子化対策の法律もできて市町村も本腰を入れ始めているところです。
つまり、世におけるイノベーションの順序とは、先見性ある民間の取り組みが普及した後、中央官公庁が法制化に乗り出し、それが県や市町村に下りていくという仕組みになっています。そのタイムラグはおよそ5年から10年はあると思います。
そこで、建設コンサルタントですが、我々は悲しいかな、ほとんどが国の法制化後に市町村に下りてきて、初めて腰を上げるのです。しかし現実は、市町村に「予算」が付いて初めて「仕事になる」のですから、仕方ないと言えば仕方ないのです。先見の明を持っていても、税金の中から「予算」が付かないと我々は食べていけないのです。
しかし、我々の業界に限ったことではありませんが、今後、企業が継続して利益を上げていき、いわゆる「勝ち組み」に残るには、5年~10年後の世の中をしっかりと見据え、その時代を予見した研究、開発、提案を行う必要があるでしょう。
それでは、5年~10年後の(企業や経済を取り巻く)世の中とはどうなっているのでしょうか。思いつきの部分が大半ですが、私なりに考えてみたいと思います。
①都市一極集中が緩和される
都会でないと成り立たない企業とそうでない企業の住み分けが始まるでしょう。先の九重町の例のように、都会でなくてもやっていける企業は、地価が安く環境のよい郊外に移転します。その方が賃料などムダが省けます。ちなみに都会型とは商業施設のような集約を要する企業が代表です。
②年収300万クラスと年収一億クラスの二極化が進む
エコノミストの森永卓郎さんが提唱しているように、個人のライフスタイルを優先する優雅な年収300万クラスと時間と責任に束縛されるストレスのたまる年収一億クラスの二極化が進みます。どちらがよいかは個人の能力と選択によるものでしょうが、年収300万円でも十分に食べていける社会となると、一概に300万が悪いこともないでしょう(森永さんの受け売り)。年収300万で十分食べていけるには、家賃などの固定費を大幅に減らすことが必要です。その意味で①の郊外定住型が広がればそれも十分に可能でしょう。
③週休3日制が始まり、ワークシェアリングが進む
年収300万で十分にゆとりをもって暮らすには、一人の仕事の量を減らして、その分を他にまわすことが必要です。失業者も減ります。そのためには、週休を3日にして、余った仕事と賃金をシェアリングするのです。
公務員などは今でも仕事が少ないので、真っ先に週休3日にして賃金を按分で減らす必要があります。三位一体改革、財政縮減にも貢献します。ただし人並み以上に能力がある公務員は、海外研修や能力開発研修などを充実し、賃金を今よりも増やします。その代わり仕事時間も増え、仕事に対するシビアな成果が求められます。同じ年齢でも年収300万の一般層と1200万のエリート層があってもいいのです。
④食に対する危機感が急速に強まり、多少高くてもよい食材を選択するようになる
ご存知のように日本の食事情は悲劇的です。食糧自給率は欧米でほぼ100%なのに対し、日本は40%程度です。自給率を100%に近づけることを国策としてかかげ、質の悪い中○産などは国民の自主的な選択によって排除するべきです。
市町村は「食料自給地域行動計画」を策定し、食料自給率(地産地消率)を数値として把握し、何年で何%上げます、と言うのを目標数値としてあげます。そのための具体策を計画し、数値目標を達成した市町村には財政的な支援が与えられます。
⑤不正・不祥事が減る(なくなる)
これは既に進行しつつありますが、不正や不祥事を起こす企業は必ず淘汰されます。かつては不正があっても隠しとおすこともできましたが、今は、ITの発達で情報が瞬時に開示され、同時に個人の社会モラルも向上しますので、雪印や三菱自動車のように不正はすぐに明るみに出ます。その不正の部分と言うのは社会的なムダの部分なので、それがなくなれば経済・財政的にもよい社会が築けます。
ちなみに土建業界などは今でも「談合」をしようとしますが、これも早晩なくなると思われます。法令遵守が今の流れであり、発注者である行政も談合防止に力を入れ、税金を払っている市民もそれを許しません。5年後には談合がなくなっていることを考えれば、今から「談合しない宣言」をしとけば一番乗り(ファーストライド)で勝ち組みに近づけると思うのですが。
まだ、考えられることもあるのですが、今日のところはここまで。
(ちなみに産業用大麻も5年後辺りから普及し始めるだろうなあ)
(写真はヘンプの実用性)